
指揮者にとって大切な楽譜=フル・スコア(演奏される全てのパートの音が記された総譜)。
「小型、中型、大型、」など、車の免許さながらにさまざまな大きさのものがある。オペラのスコアを含めて、大概のものがB4サイズで事足りるのだけれど、時々超大型や、A3サイズものがある。
2016年から出雲で取り組んでいる『連作交響神樂』プロジェクト(平野一郎作曲)は現在第5番まで進んでおり、その総譜はいずれもA3サイズだ。この大きなスコア、既存のカバンには入らないため、持ち歩くのにいつも困っていた。
そこで今回、思い切ってオーダーメイドした。それがこの写真のカバン。
倉敷のえびす商店街にある「革工房 バロール」というお店。
素晴らしい作品。重畳たる気分✨️
このカバン&SHOPについてはいろいろ思い入れがあるので、また次回ブログに挙げたいと思っている。
ー ☆ ー
8月に入り、少しずつではあるけれども各地で音楽活動・演奏会が再開されつつある。喜ばしいことだ。
指揮活動をはじめ、仕事で移動する際はなるべく電車や新幹線などの公共交通機関を利用するようにしているのだけれど、今はコロナ感染のリスクを懸念する見方が強いので、行ける範囲であれば出来るだけ車で移動している。
コロナで大変な社会混乱の最中、今年も無事にお盆も迎えることが出来たことに、ただただ感謝。
この日は天気も良く、時間もあったので、高速道路に乗るよりも下道を走りたい気分になり、新しいカバンを積んでのプチドライブ。
普段とは違った道を走り、新しい景色に触れる。初めて出会う土地の清々しい空気感を全身で味わえるのは最高だ❗
といっても、ドライブが趣味な訳でもなく、普段このようなことをする習慣はないので、当然走り慣れていない。土地勘がないので、カーナビに「一般道路優先」で入力して指示を仰ぐ😅
本当は島根の“奥出雲おろちループ”を経由したかったのだけれど、ナビ先生の言うとおりに進むと、何やら知らない山奥の方へ案内され・・・
「これは車が通る道なのか?こんな山中を走るのか!?」
「落石注意!?土砂崩れの工事中!?」
「かれこれ1時間ぐらい人に出会ってないぞ!」
「なんだこの道は!?対向車来たらどうすっべ?」
「狭い砂利道・・・落ちたら最後だ・・・」
など、気分はMAXインディージョーンズ。
洞窟ではないけれど、リアル・グーニーズ状態(笑)。(当然、写真を撮る余裕はない)
山中の閉ざされた空間を走り続け、だいぶ時間も経ち不安が募り始める。。。💧
とその時、山道のカーブを登った瞬間、色が変わった。運転席の左側に広がる夕映えの景色。
長い長い雑木林を抜けて差し込む陽の光。まるでシベリウスの交響曲第2番の第4楽章のよう。
「緑山重畳」の記念碑の通り、まさに重畳たる山脈、重畳たる心地。
しばらく道を走り、山を抜けると岡山県新見市に入った。桃源郷のような風景。空気も美味しい。
心の内から、音楽が湧き上がってくる。 
反対側は、沈む夕陽に映し出された“天空に羽ばたく不死鳥雲”
ナビの不思議なルート設定のおかげで思いがけない体験が出来た偶然の喜び。
夢のような冒険のひと時だった。
と同時に…
スコアは地図のようなもの。己の五感を閉ざしてナビの指示に従うのではなく、きちんと自分で読み、進むべき方向を考察し、選択・決断しなければならない、という基本をあらためて感じたドライブでもあった。