コンサートの企画や組織運営などの舵取りに尽力するも、コロナ様の気まぐれに翻弄される日々👑
本日7月21日(火)は、ホープ・ページを立ち上げてからちょうど1カ月。
前回同様「新月」🌑
そして、土用・丑の日。
一年で一番暑い日が始まるといわれるだけあって、茹だるような暑さだった。ウナギを食べることが叶わなかったので、代わりに桃(戴き物)をたらふく食べた。イザナギノミコト由来で「魔除け・厄除けの果実」とされる桃。
果たして、コロナ王には如何に!?🍑👑
(懇意にしている方から頂戴した桃。「夏は桃」。鬼も泣き止む美味しさだ🍑)
『枕草子』には「夏は夜。月のころはさらなり」とあるが、
「夏は桃。新月のころはさらなり」といった心地だ。
満月も素敵だけれど、姿を隠した新月もまた美しく、風情がある。「何かが顕れる」「これから新しく始まる」という闇夜の神秘さがある。
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ステイホーム中、人には会えなくなったけれど、その分いろんな曲に出会うことが出来るのは一つの収穫だろう。
今取り組んでいるのはモーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》。 台本の冒頭には、第1幕の設定として「Giardino.Notte(庭。夜)」とだけ記されている。
全てはこの夜、ドンナ・アンナの父=騎士長がドン・ジョヴァンニに殺められたことにより始まる。そして、オペラの最後では、石の像(騎士長)に招かれた晩餐の最中、改悛を拒んだドン・ジョヴァンニは地獄へ落ちる。
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素晴らしい作品は、見る人の想像力を刺激し、いろいろな見方・解釈の可能性を与えてくれる。
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父であり騎士長の死は、精神的・社会的な中心なる存在の喪失であり、世界の瓦解。
世界の秩序を保っていた「軸」を失うことによって、カオスが到来し、
人間はその中にあって新たな調和とロゴスを模索し始める。
このことが起きるオペラの第1曲目、刺された騎士長が息絶え絶えに歌う背後で流れる三連符の音楽は、後のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番《月光》の冒頭にも通ずるところがある。
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ところで、モーツァルトのオペラに欠かせない「レチタティーヴォ」。
語ることによって物語を進めていく部分で、音の高低や音型、リズムなどで、人物の感情や状況を解することが出来る。
「語る」といっても、ミュージカルのように「話をする」感じではなく、歌う声で音符に沿って話されるので「朗唱/歌うように語る」など訳される。
レチタティーヴォ[Recitativo]の名詞[Recita]は、「上演・公演/詩の朗読」の意味。
ラテン語の朗読「法廷での資料の朗読」や「舞台での台詞の朗読」が、イタリア語に入って、今日でも同様の意味で使われている。つまり、今日の日常語でも[(re)-citare:激しく運動させる、刺激する、召集する、召喚する]などの意味で用いられている。よって、レチタチーヴォを歌う歌い手には、こうした背景からして修辞的表現、発語のセンスが求められる。
19世紀に入って、作曲家でピアニストだったリストが「リサイタル」を開催して以来、現在でも演奏家が人々を召集して自らの音楽を語り、披露する公演は「リサイタル」と呼ばれている。現在で言う「リサイタル」」と、当時使われた「リサイタル」が同じ言葉でありながら、同じ意味で掲げられているのかどうかは不明なのだけれど。
当然ながら、指揮者は音を出さないので「リサイタル」は出来ない。
京都市立芸術大学の大学院博士課程でも、他専攻は「博士リサイタル」を開催するが、指揮は「博士コンサート」となっている。今はコロナ様が世間を騒がせておられるので、博士コンサートの計画も進まず、苦労の日々・・・
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話をレチタティーヴォに戻そう。
リズムと音程がついた朗唱部分には、伴奏としてハーモニーも付けられている。時にチェンバロで、時にオーケストラで。(詳細は割愛)
ハーモニーが付くと、より一層語る言葉に意味を与えることが出来る。
例えば、喜びに充ちた言葉を語る時に明るいハーモニーを付けることも出来るし、明るい言葉を語っている時に、絶望感の漂うハーモニーを付けることで、本心とは裏腹の言葉だという心情を表現することも出来る。
チェンバロで演奏する際は、楽譜に書いてある通りではなく、書いてある和音を素材としながら、演奏者の即興が加わる。この伴奏如何によって、言葉やドラマの持つ意味合いが大きく変わることもあり、音楽にも演出にも、多大な影響を与えることになる。
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さて、以前ブログで取り上げた「安倍首相と三原じゅん子氏の対談」の動画。
あの語りを、トランペットで語るように演奏していたのは、まさに「レチタティーヴォ」だった。言葉がなくても、日本語を理解していなくても、音楽でそれを伝えてくれる、まさに理想的なレチ。
その後、あの語りにはハーモニーが付けられた!
スーパー・レチタティーヴォ❗
【Abe vs trumpet (harmonised version)】
前回の動画と今回の動画を見比べていただくと、ハーモニーがあるかないかで、受ける印象が全く変わることを体感していただけることと思う。
【Shinzo Abe vs Trumpet】
恐るべし、ハーモニーの力❗
ピュタゴラスによる「音楽と数の関係」についての実験
ガッフリオ「Theorica Musice」(1492)
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しかし、ハーモニーは同時に、気を付けなければならない。
耳に心地よいハーモニーが真実とは限らないのだ。
付けられたハーモニーは、意味を固定し、
気付かないうちに思考と感覚をある方向へと導く力を持っている。
甘い言葉で人の心を誘惑しているその裏で、
真実はいつの間にか隠され、葬られているかもしれない。
人は前を見ている時、後のものを同時に見ることができない。
だが、感じることは出来る。
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心を澄ませて 耳傾けよう
(天地のるつぼ『出雲讃歌』から/詞:大岡信)
日本最南端の有人駅「山川駅」からの眺め(鹿児島県)